参議院本会議 1997年(平成9年)5月9日 |
運輸大臣 古賀 誠 |
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全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成九年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案、以上二件につきましてその趣旨を御説明申し上げます。
初めに、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
新幹線鉄道につきましては、国土の総合的かつ普遍的開発に重要な役割を果たすものとして、現在、三線五区間においてその整備が着実に進められているところでありますが、残る未着工区間の整備についても、国土の均衡ある発展、地域の振興等に資するものとして、沿線地域から強く望まれているところであります。
これら未着工区間の新幹線鉄道の整備につきましては、国鉄改革及び行財政改革の趣旨にかんがみ、営業を行う旅客鉄道株式会社の経営の健全性を損なわないこと等を前提として、その財源の手当てについて検討を進めてまいりましたが、今般、整備新幹線の建設費は、国、地方公共団体及び旅客鉄道株式会社が負担することとし、このうち国及び地方公共団体の負担については、既設新幹線鉄道の譲渡収入全額を国の負担分とみなし、これに公共事業関係費を加えた額を国の負担分とした上で、その二分の一を地方公共団体の負担分として位置づけるとともに、地方公共団体の負担については、所要の地方交付税措置を講ずること等により新幹線鉄道の整備のための財源を確保する旨の結論を得たところであります。このため、この結論に従い、日本鉄道建設公団が行う新幹線鉄道の建設費についての国及び地方公共団体の負担等所要の規定を定め、もって新幹線鉄道の着実な整備を図ることを目的として、この法律案を提案することとした次第であります。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、日本鉄道建設公団が行う新幹線鉄道の建設に要する費用のうち、営業主体から支払いを受ける貸付料その他の日本鉄道建設公団の新幹線鉄道に係る業務に係る収入をもって充てる部分を除いたものは、政令で定めるところにより、国及び地方公共団体が負担することとしております。
第二に、運輸大臣は、日本鉄道建設公団が建設する新幹線鉄道に係る工事実施計画を認可しようとするときには、あらかじめ新幹線鉄道の建設に要する費用を負担する地方公共団体の意見を聞かなければならないこととしております。
なお、この法律は、平成九年四月一日から施行することといたしておりましたが、衆議院において「公布の日」と修正されております。
次に、日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成九年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
国鉄改革が行われた昭和六十二年度首において約二十五兆五千億円であった日本国有鉄道清算事業団の債務等の額は、平成八年度首には約二十七兆六千億円に増加しており、今後、日本国有鉄道清算事業団が保有する資産の売却収入も多くは見込まれないことから、大幅な債務の縮小は期待できない状況にあります。
このため、政府としては、昨年十二月の閣議決定において、平成十年度より債務等の本格的処理を実施することとし、平成九年中にその具体的処理方策の成案を得る旨を定めたところであります。
本法律案は、このように日本国有鉄道清算事業団の債務等の額が累増している状況にかんがみ、当該債務等に係る本格的処理策が実施されるまでの間において、最終的な国民負担が増加することを防止する観点から、日本国有鉄道清算事業団による平成九年度の借り入れから生じる将来的な利子負担を軽減するため、一年度限りの臨時異例の措置として、平成九年度において緊急に講ずべき特別措置を定めるものであります。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、日本国有鉄道清算事業団の債務等に係る負担の軽減を図るため、政府は、日本国有鉄道清算事業団の債務のうち、額面金額の合計額が三兆三十五億円に相当する日本国有鉄道清算事業団債券に係る債務を一般会計において承継することとし、同時に、日本国有鉄道清算事業団に対し同額の資金を無利子で貸し付けたものとすることとしております。
第二に、政府は、日本国有鉄道清算事業団に対する無利子貸付金について、据置期間を一年以内の期間延長することができることとしております。
以上が、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成九年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案の趣旨でございます。 |
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横尾議員にお答え申し上げます。
まず、国民に対する情報の開示についてのお尋ねでありますが、整備新幹線の整備に当たりましては、先生も御指摘いただいたとおり、国民の理解を得ながら進めるということが必要であろうと考えております。このため、政府及び与党から成る検討委員会において作業を進める際には、国民に対する情報の公開に十分配慮してまいります。
次に、法の目的に「地域の振興に資すること」を追加した理由についてのお尋ねでありますが、新幹線は地域格差の是正、地域住民の利便性の向上、産業の振興等に大きな役割を果たすものであることから、今般、新幹線の建設費につきまして地方公共団体の負担を法律上定めることにかんがみ、新幹線の整備が地域の振興に資するものであることを法律の目的規定においてあわせて明らかにしたものでございます。
また、国が責任を持って財源を確保すべきとのお尋ねでありますが、整備新幹線は国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものとしてその整備を推進する必要があることから、その整備方策について長年にわたり検討されてきたところであります。特に、平成六年十二月の連立与党申し合わせ及び関係大臣申し合わせによりまして、未着工区間の整備のための新しい基本スキームを検討し、平成八年中に成案を得ることとされたところであります。
これを受けまして政府及び与党において精力的に検討が進められてきた結果、今般、ぎりぎりの調整の結果として、新しい財源スキーム等について成案を得て政府・与党合意がなされたところであります。
既設新幹線の譲渡収入の使途及び整備新幹線の財源についてのお尋ねでありますが、ただいま総理に御答弁をいただいたとおりであります。
整備新幹線の施設の財産権についてのお尋ねでありますが、整備新幹線につきましては、既設新幹線と異なり、収益性等にかんがみ、平成元年の政府・与党申し合わせに基づき、日本鉄道建設公団が保有し、営業主体でありますJRに有償で貸し付けることとしたものであります。
最後に、並行在来線についてのお尋ねでありますが、整備新幹線を建設着工する区間の並行在来線につきましては、JRの経営に過重な負担をかけることを避け、第二の国鉄をつくらないという観点から、従来どおり開業時にJRの経営から分離することといたしました。具体的には、工事実施計画の認可前に沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定することといたしました。
その際、地域の足の確保につきましては、これに支障が生ずることのないよう代替交通機関について関係者間で十分協議をいたしまして、適切に対処していくことといたしております。 |
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中尾議員にお答え申し上げます。
まず、国民に対する情報開示についてのお尋ねでありますが、先ほども答弁申し上げましたように、整備新幹線の整備に当たりましては、国民の理解を得ながら進めることが必要であろうと考えております。このため、政府及び与党から成る検討委員会において作業を進める際には、国民に対する情報の公開に十分配慮してまいりたいと思います。
次に、整備新幹線の整備と国鉄長期債務処理との関係についてのお尋ねでありますが、整備新幹線につきましては、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するものであることから、その整備を推進する必要があります。収支採算性の見通し、JRの貸付料等の負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意等の基本条件が整えられていることを十二分に確認した上で、財政構造改革と矛盾しないよう適切に対処することといたしております。
一方、国鉄長期債務につきましては、昨年十二月の閣議決定において、平成九年中に本格的処理のための具体的処理方策の成案を得ることとされております。今後、あらゆる選択肢を精力的に検討するとともに、国民的論議を十分に尽くし、今年中に具体的処理方策を策定できるよう最大限の努力を行っていく所存でございます。
以上のように、全国新幹線鉄道整備法に基づく整備新幹線の整備と国鉄長期債務処理の問題とはそれぞれに推進していくべきものであろうと考えております。
最後に、交通政策全般の総合的な見直しについてお尋ねでございます。
近時の我が国経済社会情勢の変化に対応いたしまして、安全の確保を基本といたしまして、陸海空にわたり整合性のとれた交通体系の形成と安定的で質の高い運輸サービスを確保していくということは必要なことでございます。
このため、運輸省といたしましては、関係各省とさらに緊密な連携をとりながら、極めて必要性の高い分野、緊急性の高い分野に効率的、効果的に予算配分を行い、運輸関係社会資本の整備を図る所要の施策を展開してまいりたいと考えております。
よろしくお願いいたします。 |