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衆議院 社会労働委員会 1980年(昭和55年)11月18日
衆議院議員 自由民主党 古賀 誠
私は、このたび初めて国政の場に参画をさせていただきました。きょう初めて質問の機会を与えていただきまして、大変記念すべき日でございます。

 また藤尾労働大臣におかれましては、政治、経済まことに多難な今日、特に労働行政におきましては大変いろいろな問題を抱えている昨今でございますが、日夜われわれ国民のために御精勤を賜っておりますことに、心から敬意と謝意を申し上げる次第でございます。

 さて明年は国際連合が提唱する国際障害者年であります。国際連合が一九七六年の第三十一回総会におきまして、一九八一年を国際障害者年とすることを全会一致で決議しまして、今日まで種々の討議が国連においてなされ、また、わが国においても、この国際障害者年に向けての準備がなされてきたところであります。

 国際障害者年は「完全参加と平等」をテーマとして、心身に障害のある人たちの社会参加と、障害あるがゆえの差別の撤廃を推し進めようとするものであります。このテーマのもとに五つの大きな目的を掲げてあるということを聞いております。この五つの目的を実践するために政府としては総合的な対策を講ずることを検討してあると思いますが、具体的には、どのような施策を講じていくこととしてあるのか、その基本的な方針を総理府にお聞きしたいと思います。

心身に障害があるということは、単に医学的な事実としての能力の問題、つまり本人がある行為を行うことについて不自由であるという問題だけでなく、それがもとになって所得面や職業、教育等の面について種々の社会的な制約を受けるという問題があると私は考えております。このような問題の解決のためには、保健、福祉、年金、雇用、教育、医学的対策等、非常に広範囲にわたって総合的な対策の推進が必要ではなかろうかと考えられます。私は、ただいまお答えをしていただきました五つの目的のそれぞれについて、政府として現在すでに、どのような措置が講ぜられ、今後その目的を実現するために、どのような施策を推進していこうとお考えなのか、その一つずつについてお聞きをしていきたいと考えております。

 まず第一に「障害者の社会への身体的及び精神的適合を援助すること。」という目的については、障害者問題の全般にわたるものであり、その基本的な方向について総理府にお伺いしたいと考えております。

第二の目的は「障害者に対して適切な援護、訓練、治療及び指導を行い、適当な雇用の機会を創出し、また障害者の社会における十分な統合を確保するためのすべての国内的及び国際的努力を促進すること。」という目的を掲げてあるわけでございますが、この目的実現のために政府は、どのような対策をお考えになっているのか。厚生省、労働省に、その具体的な内容をお聞きしたいと考えております。

 まず第一に厚生省にお聞きしたいのでございますが、近年の障害の重度化傾向から見ますと今後、在宅身体障害者の対策を一層充実する必要があると考えるのでございます。身体障害者の社会参加を進める観点から、どのような施策を具体的に講じていこうとお考えなのか、お聞きをしたいと思います。

次に労働省にお尋ねをしたいので、ございますが、心身障害者の雇用促進のためには、的確な職業能力を評価することが私は必要ではなかろうかと考えております。この点について、どのような施策を講じているのか。たとえば西ドイツのハイデルベルクにあるリハビリテーションセンターの職業適応能力検査所におきましては、最高四週間かけて職業能力を評価する制度等を有しておると聞いておりますが、わが国においても、このような制度を設けることが、もう現実には必要ではなかろうか、そういう時期に来ているのではなかろうかという考えを持っておりますが、労働省の御見解をお尋ねしたいと思います。

テーマの目的の第三番目は「障害者が日常生活において実際に参加すること、例えば公共建築物及び交通機関を利用しやすくすることなどについての調査研究プロジェクトを奨励すること。」ということになっておりますが、たとえば歩道にスロープを設けて車いすを利用する人に便利にしたり、また駅のプラットホームに点字ブロックを設けて、目の不自由な人に対して安全の配慮を進めるなど、現在でも、わずかでありますけれども種々の配慮を賜っていることは存じているところであります。またアメリカなどでは、国の助成している施設等については身体障害者用に建設することが義務づけられているということもお聞きいたしております。これらの点について建設省は、国の施設及び国が助成する施設の現状と、今後どのような施策を講ぜられるのか、お考えをお聞きしたいと思います。

たとえば建築基準法にそれを盛り込むとか、そういった具体的なことは現在お考えではございませんか。

次に第四の目的でございますけれども「障害者が経済、社会及び政治活動の多方面に参加し、及び貢献する権利を有することについて、一般の人々を教育し、また周知すること。」ということを掲げてあります。障害者については本人が、その障害ゆえに種々の社会的制約を受けるだけでなくて、他の人々の理解が不足したり偏見があるために社会への完全な参加が妨げられることが多分にあるのではなかろうかと考えられます。したがって国民の理解を促進することは、こういった時期にきわめて重要な課題ではなかろうかと考えるのでございます。このための啓発活動をいかにして行うのか、この点についても、これからは大変重要な問題ではなかろうかと考えておりますので、総理府に御所見をお伺いしたいと思います。

この問題については、ぜひ、ただいま御意見をお聞かせいただきましたとおり積極的にやっていただく必要があるんではなかろうかと私は考えております。

 最後に五番目のテーマといたしまして「障害の発生予防及びリハビリテーションのための効果的施策を推進すること。」ということをうたってあります。近年の身体障害者の増加は交通災害や労働災害等によるところが大きいというふうに考えられるわけでございますが、このような後天的な障害は、まさに人災によるものであり、これを最大限防止することは、われわれの責務であろうと考えております。しかし不幸にして身体に障害を有することになった人たちについては、適切な医療の実施はもちろんでございますけれども、社会復帰のためのリハビリテーションの効果的実施が、より以上に大事ではなかろうかと私は考えるのでございます。この点について厚生省はどのようなリハビリテーションの体制の整備を進められるものか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

それでは次に、労働省は労働災害被災者のリハビリテーション体制を充実するためには、いかなる施策をお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。

大変ありがとうございました。

 以上、各省庁から国際障害者年に向けての施策の充実について、お聞かせをいただいたわけでございます。

来年、国際障害者年という大変記念すべき年であります。ただいま、お話をいただきました方向に沿って一層、皆様方に御努力をいただきたいということを、私はお願い申し上げておきます。

 次に私は、障害者の方々の雇用率の達成について若干お尋ねをさしていただきたいと思っております。

 障害者の人々が社会に参加していく上で重要なことは、職業的に自立して社会の一員として、ひとり立ちすることが一番重要なことではなかろうかと私は考えております。このために事業主に対して一定の割合以上の身体障害者の雇用を義務づける身体障害者雇用率制度が創設されていることは御案内のとおりでございます。私は、ここで若干その率についてお尋ねをしたいと思うのでございますが、民間企業それから国が監督しております特殊法人、そういったものについては現在どのくらいのパーセンテージを義務づけられているか、お尋ねをさしていただきたいと思います。

それで、ごく一番最近の調査では、ただいまお答えをいただきました三つの機関についての達成率はいかがになっておりますか、お尋ねをいたします。

どうも私は一つ残念に思いますのは、特殊法人すなわち国が監督をいたしております、そういった法人におきまして大変このパーセンテージが落ちるんじゃないか、努力が足りないんじゃないかというようなことを大変残念に思いますと同時に、これは何とかひとつ、民間企業に労働省として御指導いただく上にも、やはり私は、こういった特殊法人は率先して、その率を達成すべきじゃないかという考えを持っております。

 そこで私は、特殊法人を多く所轄していただいております、まあ私が選んだのが、いろんなあれはあるかもわかりませんけれども、きょうは建設省、運輸省の両省にお越しをいただいているわけで、両省のお役所にお尋ねをしたいのでございますが、建設省、運輸省で所轄している特殊法人で、身体障害者雇用率未達成の特殊法人が大体どのくらいのパーセンテージを占めているか、お尋ねをしたいと思います。

お聞きいたしますと大変私は残念でたまらないのでございます。どうして、それらの特殊法人の雇用率が未達成なのか、その原因というものは、どういったところが一番大きな原因だとお考えでございますか、両省にお尋ねさせていただきます。

それでは今後どのような形で、そういった未達成特殊法人に指導し、雇用率を達成していくための御努力をいただくのか、その方策について、ひとつ具体的にお願いしたいと思うのであります。

身体障害者の雇用促進については労働省が中心に進められているわけでございます。ただいま、お聞きしましたのは一部の監督官庁のお話でございますけれども、労働省としては今後、特殊法人に対して、身体障害者の雇用促進について、どのような御指導をしていただくお考えなのか、できたら具体的にお聞きをしておきたい。それから現在まで、どのような御指導をしていただいたかということも、あわせて、お聞かせいただければありがたいと思います。

ただいま局長からお答えいただきましたとおり、ぜひひとつ、きめの細かい御指導と申しますか、そういったことを今後続けていただきたいと考えるわけでございます。同時に私は、先ほども申し上げましたように、やはり民間企業その他に、こういった雇用率の達成をぜひお願いする上でも、特殊法人というものは、みずからひとつ全力を挙げて、与えられたと申しますと語弊がありますが、義務づけられた雇用率の達成については皆さん力を合わせて、ぜひ達成するように、ひとつ御努力をいただきたいということを、最後に心からお願いを申し上げておく次第でございます。

 次に私は、心身障害者の能力開発の問題について若干お尋ねをしていきたいと思っております。

 身体障害者の方々が一本立ちして職業につくということで一番大きな基礎になるものは、やはり能力開発をいかにして探し出してやるか、また伸ばしていくかということが重要な基礎になるのではなかろうかと私は考えております。そういった意味で心身障害者の雇用の促進について、身体障害者雇用率制度による行政指導の徹底や、また事業主に対する各種の助成措置の積極的な活用によりまして、心身障害者の雇用につきましては事業主の方に積極的な機運が、ようやく今日、見られ始めたのではなかろうかと思います。そういった意味では、これまでの政府の努力が少しずつではありますけれども、今日、実を結びつつあるのが現状だと考えております。

 他方、近年の傾向といたしましては、単に身体障害者数が増加しているばかりでなくて、障害の程度が非常に重度化し、なおかつ種類が多様化をしている傾向が見られるようでございます。これらの重度障害者は、中軽度の障害者の雇用が進む一方で依然として厳しい雇用状況に置かれているのは事実でございます。このような状況を克服するためには、まず第一に大切なことは、身体障害者自身の職業能力を開発し向上させることにあると私は考えるのでございます。身体障害者、特に重度障害者が就職し充実した職業生活を送ることができるためには、その能力と適性に合った職業につくことが最も大事なことだと私は考えております。それに相応する職業能力を持つことであり、それによって初めて事業主が身体障害者を雇用することができ、また事業主も喜んでいただける。したがって身体障害者の雇用の促進と安定が、そこに図られるのではなかろうかと考えるのでございます。

 この観点から心身障害者の能力開発の現況及び今後の方策等について若干お尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず初めに、心身障害者の職業訓練の実施状況は現在どのようになっているのか。同時にまた訓練校の数また訓練人員、訓練科目等について、お聞かせをいただければありがたいと思います。

身障者の職業訓練、能力開発の重要性というものは、これらの人々が職業的に自立して社会に参加するためには、ぜひ必要なことであります。このために、たとえば各県に一校ほど心身障害者のための訓練校を設置するなど、身障者に対する職業訓練を、現在お聞きしたものより以上に、もっと充実すべきではないか、私は、ぜひそれはやっていただきたいという考えを持っておりますが、この点について御所見をお尋ねしたいと思います。

身障者に対する職業訓練の充実を進める上では、近年の障害の重度化傾向から見て、重度障害者に対する職業訓練といったものを、もっと充実すべきではないか。また特に私が考えておりますのは、精神薄弱者のための公的な訓練校というのは、調べましたところ愛知県の春日台職業訓練校一校しかないというふうにお聞きいたしております。精神薄弱者に対する職業訓練の充実ということは、どうしても、これから大事ではなかろうか、また、そういったものの充実に努めていかなければならないのではなかろうかと私は考えておりますが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

先ほど私が冒頭述べました明年の国際障害者年のテーマであります「完全参加と平等」の観点から考えてみましても、身体障害者が一般の訓練校にも入校できて健常者と一緒に訓練できるような体制を、できるだけ整備すべきだと私は考えておりますが、この件については、どのようなお考えでしょうか。

また、事業主の多様化するニーズにこたえるためにも、身障者に対する適時適切な能力開発の機会を数多く確保することが大事なことであり、重要だと私は考えております。このためにも民間で行われている能力開発に積極的に参加させるなどして、民間の活力というものを最大限利用すべきではなかろうかと私は考えておりますが、いかがでしょうか。

それでは来年の国際障害者年に、わが国において国際身体障害者技能競技大会、普通アビリンピックと申しますか、こういった開催の運びとなっておりますが、この技能競技大会の目的と、その内容については、どういうことをお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。

身障者の技能に対する社会の認識を高める啓発活動としては、私は大変有意義なことだと考えております。また同時に身体障害者自身の技能の向上のためにも、私は大変有意義なことではなかろうかと考えております。そういった意味で現在まで、その準備の進捗状況といいますか、現状はどの程度まで進んでいるのでございますか。

三番目に私は、身障者の能力開発問題について若干、政府の御所見をお尋ねしたわけでございます。どうしても身障者が一本立ちして職業を得るという観点からも、私は、これからますます、この能力開発の問題については非常に大事なウエートを占めるのじゃないかというふうに考えておりますので、より一層御努力をいただきたいと考えております。

 以上、私は国際障害者年を契機といたします諸種の施策について、雇用問題を中心に政府の対応をお聞きしたわけでございますが、大変むずかしく、また厳しい情勢の中ではありますけれども、私は、こういった問題が今後一番大事な問題になるのではなかろうかと考えますので、今後とも一層の御努力をお願いをいたしまして、私の質疑を終わらしていただきます。ありがとうございました。


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